幼い頃のあだ名で

事故で入院して1週間が経った。病院に運ばれたあとしばらく意識が戻らず、両親が地元から来ていた。なんとなく父と母の顔を見た記憶があるが、すべて夢だった気もする。ICUから一般病棟に移って携帯を触れるようになり、父からLINEがきた。わたしのことを小さな頃のあだ名で呼ぶので胸が苦しくなった。

脳の血管が破れているそうで、最初記憶が戻るかわからなかったらしい。入院している病院では一般病棟での面会ができないので、もし記憶が戻らなかったとしたらどんな風に過ごしていたのだろうかと想像する。携帯を開いて、知らない人と知らない自分のやりとりするLINEやメールを眺めていたのだろうか。それを見て、自分は誰のことが好きで何をするのが嫌いでどんな風に生きたがっていたのかを想像したのだろうか。退院して何の懐かしさもない家に帰ってまず何を触るのだろうか。何も知らないわたしは本棚やクローゼットの中身を気にいるのだろうか。今好きだと感じている人たちのことをまた好きになるのだろうか。

いつ退院できるかわからずお金や将来のことが不安でたまらないけど、わたしは思ったより頑丈で、大きな事故や怪我や病気にも強くて、これから先も生き延びるのかもしれないと諦めがついた。泣きそうになれば生き延びてしまう自分の人生を丁寧に温めていくしかない。

今日はちょっと吐き気や頭痛が落ち着いていたのでご飯を少し食べられた。退院したらさつまいもごはんが食べたいなんてことも考えていた。