あらゆる選択を

出社して仕事をするようになり、帰りの電車で泣くことが増えた。入院中ずっと社会から取り残されていると思っていたけど、仕事に復帰しても社会から取り残されていると思うのは変わらない。頑張っても頑張ってもどこにも居場所がないことに耐えられない。

 

一度死にかけたのに生き延びたことで、どうしてもだめだったら人生を諦めようという逃げ道がなくなってしまった。なにか失敗してもうだめになったとしても生き延びてしまうのかもしれない。これから先絶対に何の選択も間違えてはいけないのだといつも怯えている。今まであらゆる選択を間違えてきたというのに。

 

先日知らない番号から留守電が入っていて、再生したらもう会うことのない人がわたしの名前を呼ぶ声が流れてきた。頭の中で声を再生できなくなったとしても、聞けば覚えているものだった。何をしてもこの人には嫌われないと信じ切っている人の振る舞いはたまらなくかわいいと思う。たまに声を聞きたくて留守電を保存したが、夜にもう一度再生しようとしたら消えてしまっていた。

 

ずっと助けてほしいと思っていて、でも助けてくれようとする人の手を取ることはできないだろうとわかっている。誰も助けてくれないのではなく、自分の問題なのだとわかっている。人に助けてほしいだなんて言えないし、助けてあげると言ってくれるやさしい人のことを大切にすることも信じきることもできないし、人に助けられるような人間でもない。こんな子どもみたいなことばかり考えて落ち込んで泣きながら布団に入る生活。