取り残されても

クリスマスイブは看護師さん10人くらいがサンタの格好をして病室を回っていた。クリスマスカードをくれた。入り口で「メリークリスマス」と言って手を振り合うだけの時間にどうすればいいかわからなくなりつつ、何が作用したかわからない涙が出てきて驚いた。突然今の自分の姿を世の中から見た気持ちになったのかもしれない。隣のベッドのおばあさんは30分ほど声を上げて泣いていた。もうすぐ一年が終わる。

 

仕事のチャットを見ていると、社会から取り残されているのだと感じられて落ち込む。社会でそれっぽく生きるために必死になっていたけど、何度も何度も取り残されてしまう。何にも特別じゃないなら社会にしがみつくしか生き延びる方法はないのかもしれないと思っていたのに、それもできなかった。

 

来月から地元に戻る。しばらくは地元でも入院すると聞いていたが、通院でも良いかもしれないと言われた。早ければ年明けすぐに退院できる。病室から出られるうれしさより、こんな状態で社会にしがみつかなければならない不安が大きい。病院の中ではわたしは患者でしかなく、そこで働いている人たちにずっと守られていた。歩くこともできないし、実家に帰れば今度は家族がわたしを守ろうとしてくれるのだろう思うけど、わたしは実家が苦しくて逃げ出したのにそんなことが許されるのだろうか。


そろそろお金や仕事のこともきちんと考えなければならない。肩書きとしてはフリーランスなので、今は一切仕事がなくなった状態になっている。契約していた会社はわたしをどう見ているのだろうか。わたしが抜けた場所はどうなったのだろうか。入院や手術の費用は払えるのだろうか。家賃も払い続けられるのだろうか。また東京で生活できるのだろうか。終電に急いで乗ったり、本屋さんで本を買いすぎて鞄の重さに泣きそうになったり、はじめて行く土地でソフトクリーム屋を探したり、仕事で褒められた帰りにスーパーでお寿司を買ったりできるのだろうか。